第五章 リリース、そして研修を振り返って
長い研修もようやく終盤になり、納品を行います。ここまで悪戦苦闘の様子でしたが最後の締めはどうでしょうか。「ほっ」としつつも気を抜かずに・・・
最後のフェーズはリリースです。
テストでたくさんのバグを発見・修正したあとは最終的な実行プログラムを作成します。リリースでは作成した実行プログラムと要件定義の時に定められた納品物をすべて用意し、「納品」という最終イベントも待ち構えています。そしてユーザのための説明会などの行事もたくさんありました。しかし、どれも一筋縄でいくようなものではありませんでした。
システムが完成できない?!
テストが終了した後はいよいよリリースです。
リリースフェーズは先輩の言葉から始まりました。
「このままではRTMを宣言できない」
RTMとは"Release to Manufacturing"の略で、システムがリリースできる体制に入ったことを指します。つまりRTMを宣言できないということはシステムが完成しない事と同じです。
私たちはリリースフェーズの前にテストフェーズを行ってきましたが、テストが押してしまった関係でRTMの前段階である"RC1"自体が一週間も遅くなっていた。("RC"とはRelease Candidateの略で、システムのリリース候補版のことです。"RC1"は一回目の候補版を指します。)
よい品質でシステムを世に送り出すためにはRC1からRTMまでに最低でも一週間位は必要です。その期間にRC1が本当にリリースに耐えうる品質であるかどうかをテストします。RC1のリリースからRTMの予定日まではあと三日しかありませんでした。
だからと言って、RTMをこれ以上遅らせることはできません。システムの運用開始日は決まっていますし、RTM以降も作業はたくさんあります。例えば、完成したシステムをユーザに使ってもらう為の準備を行ったり、システムや今まで作成したドキュメントをユーザに納めたり、ユーザ向けの使用方法説明会、本番環境の構築など数え挙げればきりがありません。未完成のドキュメントも大量にありました。
私達がおろおろしていたので、先輩に
「あなた達のシステムなんだからスケジュールを考えた上で、リリースするのかしないのか考えて決めなさい」と喝を入れられてしまいました。
今まで私達はただ言われるがままに作業をしてきたので「自分で考えて行動する」という基本的な考え方が抜け落ちていました。
話し合った結果はもちろん「リリースしたい」でしたが、それにはスケジュールの見直しと共に作業内容の見直しも必要でした。
そこで私達は、ユーザ向け説明会を中止にしたらリリースができるとか、土日も出勤すれば作業時間は間に合うなど、いくつかの案を先輩に提示しました。
先輩の答えは
「ユーザをないがしろにしてはならないので、説明会は行うこと」
「時間を確保するのも大事だけど、作業の質をあげることを考えなさい」
など更なる指摘でした。作業時間を大量に確保することよりも、限られた時間の中で何をするかということが大事だったのです。結果、ユーザ向け説明会を1週間延期し、その1週間でリリースに必要な準備をしていくことになりました。
試験使用
ユーザ向け説明会を延期したことで、RTMから実際ユーザに触って頂くまでに期間が空くことになってしまいました。そのため、社内で有志を募り、これまで作成してきたシステムのリリース前の試験使用をして頂くことにしました。
説明会までの一週間の間、システムの使い勝手やデザイン、仕様に対しての様々な貴重なご意見を頂くことができました。本来なら全てのご意見を反映させたかったのですが、時間的にも、私たちの実力としても不可能であったことが大いに悔やまれます。今回頂いたご意見は次のフェーズ以降で対応することになりました。
その後、11月からは私たちと有志の方でシステムを少しずつ直していくことが決まりました。来年まで直せないと思っていた障害や要望も、いくつかはもっと早い段階で直す事がで出来るのではないかと今後への期待が高まっています。
社内説明会
試験使用も終了し、次はシステムのお披露目となる社内説明会です。

説明会を成功させるために説明会の予行を行い、先輩方に見て頂きました。予行の中で特に指摘を頂いたことは言葉の使い方です。
システムを開発してきた中で当たり前のように使ってきた言葉でも、初めて聞くユーザにとっては分かりづらいということ、誤解を招くような言い方は絶対に避けるべきであることを改めて意識しました。
例えば、システムの中で使用した「Felica」と言う言葉です。今回作成したシステムの中にはFelicaのIDを利用して勤怠を記録する機能があります。FelicaとはSuicaやPASMO、携帯電話などに搭載されている非接触方式ICカードの技術です。とても身近な規格ですが、Felicaと言う単語自体はあまり知られていません。しかし私たちは説明会の予行でFelicaと言う言葉を当たり前のように使っていました。それでは説明を受ける人たちは分かりません。聞いている人たちの立場に立って話すことの大事さを痛感しました。
そんな苦労の末、社内説明会の本番を迎えました。本番では予行の成果が実りお誉めの言葉を頂くことができ、私たち自身も非常に達成感を感じることが出来ました。人前で話すことへの苦手意識も少し克服できたと思います。
納品
最後は納品です。
これまで作成してきたドキュメントをすべて印刷し、更にそれらのドキュメントとシステムのインストーラなどをCD-Rに収めたものを納品します。当たり前のことながら納品という作業をこれまで体験したことがなく、手探りでの納品準備となりました。直前までドキュメントやCD-Rの内容の確認と修正を行っていましたが、納品作業としてはつつがなく終わりひと安心かと思いました。
その時です!最後の最後で大失敗をしてしまいました。納品を証明する「納品書」は作成したものの、お客様の受け取りの証明となる「受領書」の作成を忘れてしまっていたのです。実際の納品作業で受領書がないと、お客様からの受け取りの証拠が存在しないこととなり、全てが水の泡です。納品書や受領書については、4月の研修で教えていただいていたはずにもかかわらず、痛い失敗をしてしまい恥ずかしい限りでした。納品後に受領書を作成しました。もっと想像力を働かせて、全体を見渡せる力が欲しいと思いました。
そんなハプニングに見舞われたものの、ようやく納品が終わりました。今まで苦労してきたことがここでようやく報われた思いでした。
こうしてすべての開発プロセスがすべて終了しました。
しかしここからが本番とも言えます。作ったシステムが実際に皆様の手に渡るからです。運用が始まってからは保守や改修と言った課題が待ち構えています。今までの努力を無駄にしないためにも、これからもシステムをよりよいものにしたいと思っています。そして何より、この経験を今後の実務に活かしていきたいです。

